妻と離婚しても子供と会える?親権は?
相談者 YFさん
「だらしない君と正反対の彼女だから、うまくいくと思った」。私と妻を引き合わせた親友のあいさつは、結婚式で出席者の爆笑を誘うものでした。それから3年、妻とは
「シャツを裏返しにして洗濯機に入れないでよ。前にも注意したでしょう」
「洗うのに裏も表も関係ないだろう。おまえは細かすぎるよ」
「そんなことわかっていて結婚したんでしょう」
取るに足らないささいなことで、ののしり合いが始まるのです。そのたびに2歳の息子が2人の剣幕におびえて泣き叫びます。
「ジグソーパズルのように、一方の欠けている部分に別の出っ張っている部分がうまく合わさっていくと思ったんだ。ところが混ざることのない水と油とはね……」
「離婚を考えている」という私に、結婚式であいさつしたあの友人がため息をつきました。私は、結婚するまで服装に関しては無頓着で、部屋も散らかし放題という感じで独身生活を楽しんできました。ところが、妻は非常に細かく、隅から隅まできちんとしていないと落ち着かないタイプでした。一緒に暮らして、やっと彼女の本質がわかったのです。ただ、結婚したばかりのころは性格の違いはあまり気になりませんでした。衝突しても、自分に言い聞かせるつもりで妻にも、よくこう言っていました。
「全く違う人生を送ってきた赤の他人が四六時中一緒にいるんだから、ぶつからない方がおかしいよ」
あのころはまだ余裕があったのでしょう。そうはいっても、王子さまとお姫さまの期間はあっという間に過ぎ去ります。やがて、家賃の支払い、掃除の分担、食事の後片づけ、ゴミ出し、といった雑事でぶつかり始めました。
潔癖というよりはむしろ、かたくなな妻の性格は、長男が誕生してから激しくなっていきました。育児に関して、私は放任主義でしたが、妻は英才教育を主張しました。そして、私に向かって「幼稚園からいいところに行かせないと、あなたみたいになるから」などと言い放つのです。二人の間には口論が絶えなくなり、関係は冷え切っていきました。
最近では、妻との会話の中で、離婚の話も出るようになり始め、私も本格的に離婚のことを検討しなければならないと思っています。
ただ、私としては、妻と別れたい気持ちは強いのですが、そうなると「子供ともずっと会えなくなる」と思い、離婚に踏み切れないでいます。かわいい盛りの長男と会えなくなるかと思うと、とても耐えられません。
知人に相談したところ、子供の親権はよほどのことがない限り妻の方に与えられるといいます。そうなると、離婚後に私が子供を引き取って面倒を見ることはできません。また、朝から晩まで仕事に追われる私が、子供の面倒を見ることは事実上不可能です。かといって、毎日のように両親が喧嘩している姿を子供に見せるのも
アメリカの映画などでは、離婚後も、子供が父親の元を訪れて短期間一緒に生活する場面なども出てきますが、日本でも、そのようなことは可能なのでしょうか。(最近の事例を参考に創作したフィクションです)
子の養育の取り決めがない離婚が半数近くも?
別居の父が子供の学校で焼身自殺
昨年12月23日、東京都文京区の小学校に、会社員の男性(49)が侵入し、同小3年の次男(9)に灯油のような液体をかけ、自らも液体をかぶって火を付けるという事件が発生しました。2人は病院に搬送されたものの、男性は死亡し次男は意識不明の重体となりました。その男性は妻と離婚調停中で、次男とも別居中だったとのことです。
警察によると、男性の妻から、別居中の夫に子供を連れて行かれそうになり、制止したら蹴られた旨の相談があり、警察が通学時間帯のパトロールを強化していましたが、その後トラブルはなかったことから、妻の了解を得て警戒態勢を解いていたということです。子供に会えないことを思い詰めての行動なのかもしれませんが、何の罪もない子供まで巻き込んだ結果については何ともやりきれない思いが残ります。
報道によれば、この次男は、野球が好きで学校でも人気者だったそうですが、両親の不仲に悩んでいたとのことです。楽しいはずのクリスマスイブ前日に起きたこの痛ましい事件は、離婚という大人の事情に巻き込まれた子供の立場というものを改めて考えさせられるものでした。
なお、この次男は、事件から1週間後の12月30日に全身やけどによる敗血症で亡くなりました。心からご冥福をお祈りしたいと思います。
面会交流に関連してなされた民法改正
民法766条1項は「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と定め、同2項は「前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。」と規定しています。
この条文は2012年4月1日から改正施行されたものであり、以前の条文は「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。」とだけ規定されていました。改正により、「子の監護について必要な事項」の具体例として、「父又は母と子との面会及びその他の交流」(面会交流)及び「子の監護に要する費用の分担」(養育費の分担)が条文上に明記され、またその判断にあたっては、「子の利益」を最も優先して考慮しなければならない旨が規定されたわけです。
この改正は、子の利益の観点からは、離婚後も、離れて暮らす親と子との間で適切な面会交流が行われることや相当額の養育費が継続して支払われることが重要であり、そのためには、離婚をするときにこれらについてあらかじめ取り決めをしておく必要があるとの考えからなされています。
ただ、改正に伴って、この取り決めがなされたかどうかのチェック欄が離婚届に設けられましたが、取り決めがなくても離婚届は受理される取り扱いとなっており、法務省の調査では、そのチェックが入っている離婚届は全体の50%超にとどまるとのことです。つまり、半数近い人達が、面会交流の頻度や方法、その際の連絡の取り方、養育費の支払いや期間、支払い方法などといった重要事項を特に定めずに離婚していることがうかがえるわけです。
子供に対する親権とは
相談者は知人に相談したところ、「子供の親権はよほどのことがない限り妻の方に与えられる」と言われたとのことですが、ここで出てくる「親権」とは、文字通りに捉えれば親としての権利ということになります。具体的には、次のような内容と解されています。
民法818条1項は、「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」とし、未成年の子の親権はその子供の父母にあることを規定しています。そして、同条3項は、「親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。」とし、夫婦の共同親権が原則であることを規定しています。
親権が具体的にどのようなものかについて、明確に定義された法令はなく、解釈上様々な内容が含まれ、成年に達しない子を監護、教育し(身上監護権)、その財産を管理するため(財産管理権)、その父母に与えられた身分上および財産上の権利・義務の総称をいうとされています。
まず、「身上監護権」については、民法820条が「親権を行う者は、子の利益のために、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と規定しており、子供が独立の社会人としての社会性を身につけるために、子供を肉体的に監督・保護し(監護)、また精神的発達を図るための配慮(教育)をすることを意味すると解されています。この権利には、監護教育の任を果たすために子供が住む場所を決定するという居所指定権(821条)や、懲戒権(822条)、職業許可権(823条)、第三者が親権の行使を妨げるときにこれを排除する妨害排除権、身分上の行為の代理権等が含まれています。子供を引き取って面倒を見るということは、親権の一部であり身上監護権に含まれることになります。
また、「財産管理権」については、子供が財産を有するときにその財産管理を行い、また、子供の財産上の法律行為につき子供を代理したり同意を与えたりすることを意味すると解されています。
離婚の場合の親権の取り扱い
前述のように、父母が婚姻関係にある場合は、共同して親権を行使することになりますが、父母が離婚をする場合は、父母のいずれかを未成年者の親権者と定めなければなりません。民法819条1項は「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。」とし、同条2項も「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。」としています。
つまり、未成年の子がいる場合には、離婚後の親権者を夫婦のどちらにするか決めなければ離婚はできません。離婚届には親権者を記載する欄があり、離婚の手続き上、親権者の記載がない場合には、役所は離婚届を受け付けてくれません。つまり、先に父母の離婚だけ受け付けてもらい、子の親権者指定は後で決めることはできないということになります。また、子供を離婚後も父母の共同親権とすることはできません。必ず父母の一方が親権者となります。なお、子が数人いる場合には、それぞれの子について親権を決めなければなりませんが、この場合は、それぞれの子の親権を、父と母に分けることもできます。
このように、離婚の際には、父母のいずれが親権者になるかを決める必要があり、さらに、協議によって離婚する際には、前述したように、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項を協議で定める必要があるわけです(民法766条)。なお、協議上の離婚に限られず、裁判上の離婚を行う場合も、この規定が準用されています。
「母親を親権者」の場合が大多数
「離婚」の調停が成立した場合など、裁判手続きの下で未成年の子の親権者がどのように決定されたかは、裁判所が公表している司法統計で知ることができます。2010年度の全家庭裁判所における件数は、総数で2万1644件、このうち、父親が親権者となったのは2282件、母親が親権者になったのは1万9991件となっています。同様に、2011年度の総数は2万558件、父親が親権者となったのは2105件、母親が親権者となったのが1万9015件、2012年度の総数は2万627件、父親が親権者になったのは2038件、母親が親権者となったのが1万9161件となっています。つまり、統計資料として公表されている直近3年分でみると、裁判所の手続きの下では、90%以上の割合で母親が親権者になっているということが分かります。
なお、厚生労働省が公表している2009年離婚に関する統計(人口動態統計特殊報告)によれば、裁判所の手続きが関与しない離婚も含めた2008年度の統計では、おおむね80%が母親を親権者としていることになりますので、裁判所の手続きが関与した場合は、母親が親権者となる確率が高まるということが言えると思います。
このような統計結果からして、相談者の知人が述べるように、現在、子供の親権者となるのは、ほぼ母親であると言ってもよいかと思われます。
母親が親権を与えられ子供と生活した場合、夫の立場は?
母親が親権者となって子供と生活する場合、父親の立場としては、子供との縁が切れるわけではなく、子供を扶養する義務を有しています。具体的には毎月の養育費を支払うことになるわけですが、養育費を支払うか否か、養育費の金額をいくらにするかなどは、離婚時点前後の収入などによって、取り決めることになります。この支払いは、一般的には、子供が成年(20歳)に達するまで支払うということになりますが、多数の子供が大学に進学する実態に鑑かんがみて大学卒業までとする場合も少なくありません。
裁判例では、医師(夫)と薬剤師(妻)の夫婦間の子について当初は高校卒業までとしていたものを(大津家庭裁判所平成2年2月13日判決)、大学卒業までと変更したものもあります(大阪高等裁判所平成2年8月7日判決)。両親が大学を卒業しており、養育費を支払う父親が経済的にも余裕があるといったような場合には、養育費が満22歳まで認められる可能性も十分あると思います。
もちろん、父親は、養育費を支払うだけの立場ではありません。父親は、離婚の時点で定めた内容に基づき、子供と面会交流することができます。この面会交流とは、離婚後または別居中に子供を養育・監護していない方の親が、子供と面会などを行うというものです。
子供との面会交流は、子供の健全な成長を助けるようなものである必要がありますので、子供の年齢、性別、性格、就学の有無、生活のリズム、生活環境等を考えて、子供に精神的な負担をかけることのないように十分配慮し、子供の意向を尊重した取り決めができるように、話し合いによって決められることになります。話し合いによって決めることができない場合は、家庭裁判所での調停手続きによることになります。
ちなみに、この面会交流権という用語ですが、以前は「面接交渉」という表現が一般的でした。ウィキペディアでも、面接交渉権という用語が使われています。ただ、現在ではより分かりやすい「面会交流」という表現を使うことが多くなっています。冒頭で取り上げた、2012年4月の民法の一部改正施行においても、第766条は、「面会」「交流」といった表現を使っています。
取り決めどおりに実施されていない面会交流の実態
この面会交流ですが、夫婦間での離婚時または別居時の取り決めが必ずしもなされていないことが多く、また取り決めがあっても、そのとおりに実施されていない場合が少なくありません。
面会交流をしたくてもできない場合、家庭裁判所に面会交流の実現を求めて調停手続きを起こすことが可能であり、全国の家庭裁判所での子の監護事件のうち、申し立ての趣旨が面会交流である調停・審判事件の件数は、1999年には1969件でしたが、2009年には 6349件と、10年間で3倍以上にも増加しています。なお、前述のように、親権者を母親とする割合が高いことから、面会交流調停・審判事件では、父親が申立人である申立件数の割合が2009年には 66.8%と全体の3分の2を占めています。
面会交流の申立件数が増加している背景としては、面会交流が満足に実施されていないケースが増加していることもあるでしょうが、離婚後も子供に会いたいと願う父親が増加したという社会変化もあると言われています。イクメンという言葉が一般に使われ、育児を積極的に率先して行う男性や、育児を楽しんで行う男性が増えているという社会変化が影響しているわけです。
以前は、父母が離婚する場合、母親が子供を育て、父親は子供と縁を切るケースが多かったと言われていますが、現在は、離婚後も子供に会いたいと願う父親が増えています。民法上に定められた面会交流権の行使こそが、離婚後に子供と接する唯一の機会となってきているわけです。
そして、面会交流に関する調停について、具体的に成立した面会交流の条件としては、司法統計によると、2012年度は、約6000件の総数のうち、約3300件が月1回以上面会交流を行うというものでした。また、2、3か月に1回以上面会交流を行うとするものが約900件、4~6か月に1回以上とするものが約260件、長期休暇中に面会交流を行うというものが約110件、また宿泊を伴う面会交流を認めるものが約800件ありました。
母親が子供に会わせてくれないときは?
前述のとおり、家庭裁判所に調停または審判の申し立てをして、面会交流に関する取り決めを求めることができます。調停手続きを利用する場合には、子の監護に関する処分(面会交流)調停事件として申し立てをします。手続きの中では、話し合いにより、面会交流に関する取り決めを行うよう進めますが、話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続きが開始されて、裁判官が、一切の事情を考慮して、審判をすることになります。
上記のような手続きにおいて、面会交流に関する取り決めが成立しているにもかかわらず、監護する親(通常は親権者です)がその取り決めを守らない場合は、間接強制の申し立てをすることが考えられます。間接強制とは、義務を履行しない者に対し、「義務を履行せよ。履行しなければ、不履行1回毎に金〇〇円を支払え」と警告(決定)することで義務者に心理的圧迫を加えて、自発的な義務履行を促すものです。
この点、面会交流は関係者の協力の下に実行されてこそ子の福祉に合致するなどとして、間接強制は許されないとする意見もありますが、実務的には認められています。例えば、岡山家庭裁判所津山支部決定(平成20年9月18日)は、「面接交渉が不履行の場合における間接強制金の支払額は、債務者の拒否的な姿勢のみを重視するのではなく、債務者の現在置かれている経済的状況や1回あたりの面接交渉が不履行の場合に債権者に生じると予測される交通費等の経済的損失などを中心に算定するのが相当であり、本件における諸事情を総合考慮すれば、不履行1回につき5万円の限度で定めるのが相当である。」とし、また東京高等裁判所決定(平成24年1月12日)は、不履行1回について8万円を債権者である相手方に支払うべき旨を命じるのが相当である旨を判示しています。
注目すべき最高裁判所の判断
従来、この点に関する最高裁判所の判断はありませんでしたが、昨年3月、最高裁判所が、面会交流にかかわる審判に基づき間接強制決定をすることができる具体的な事例を明示して注目を集めましたので、ご紹介したいと思います。
判断対象となった事案の概要は以下の通りです。
X(父)とY(母)は離婚し、長女の親権者はYと定められましたが、その後、Xが家庭裁判所において、Yに対し、Xが長女と面会交流をすることを許さなければならないとする審判を求め確定しました。その審判には、(1)面会交流の日程等について、月1回、毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし、場所は長女の福祉を考慮してX自宅以外のXが定めた場所とすること(2)面会交流の方法として、長女の受け渡し場所はY自宅以外の場所とし当事者間で協議して定めるが、協議が調わないときは所定の駅の改札口付近とすること、Yは面会交流開始時に受け渡し場所において長女をXに引き渡し、Xは面会交流終了時に受け渡し場所において長女をYに引き渡すこと、Yは長女を引き渡す場面のほかはXと長女の面会交流には立ち会わないことなどが定められていました。
最高裁判所(平成25年3月28日決定)は「監護親(筆者注:Yを指します)に対し非監護親(筆者注:Xを指します)が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は、上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。」として、原審が下した不履行1回につき5万円の割合による金員を相手方に支払うよう命ずる間接強制決定を正当なものと判断しました。
この決定によって、例えば「1か月に1回以上、面会交流ができる。具体的な日時、場所等については、その都度協議して決定する。」といった抽象的な内容の取り決めでは間接強制はできませんが、前記のように具体的に取り決めておきさえすれば、間接強制という方法で面会交流を実現することも可能であると最高裁判所が認めたわけです。今後、将来における面会交流の実効性担保という観点からは、面会交流の取り決めにあたって、最高裁判所の上記判断に沿った内容にしなければならないということです。
面会交流拒否に対して慰謝料が認められた事案も
さらに、離婚した父親の子に対する面会交流を拒否した親権者である母親の不法行為責任が認められた判決もあります。
静岡地方裁判所浜松支部判決(平成11年12月21日)は、「被告が原告に対して一郎との面接交渉を拒否したことは、親権が停止されているとはいえ、原告の親としての愛情に基く自然の権利を、子たる一郎の福祉に反する特段の事情もないのに、ことさらに妨害したということができるのであって、前項で検討した諸事情を考慮すれば、その妨害に至る経緯、期間、被告の態度などからして、原告の精神的苦痛を慰謝するには金500万円が相当である。」と判示しています。
従って、このような法的措置をとることを通じて、子供との面会を実現していくことも可能ということになります。
子供の利益が最優先
以上ご説明したように、日本において、離婚後に父親が子供と会って交流を深めるという制度が必ずしもうまく機能していない現実があるのは事実です。また、先ほど引用した統計上の数字から見て、子供に会えるとしても、一定の条件のもとに、月1回程度となるのが一般的と思われ、相談者が期待するように頻繁に面会できるかは疑問もあります。
ただ、この点は、離婚時における取り決めの仕方次第で、適宜調整することができますし、万が一、奥さんが取り決めた条件通りに子供と会わせまいとしても、前述したように、法的にそのような妨害を排除する手段も存在しています。
いずれにしても、改正された民法の規定にも明記されているように、本件のような事案では、「子の利益」が最も優先されるべきであり、単に子供がかわいいから会いたいという感情のみで判断すべきものではないはずです。離婚という大人の事情に巻き込まれた子供の感情によく配慮し、冒頭でご紹介した事件で見られた、独りよがりな対応が引き起こした悲劇も参考にしつつ、両親が十分に協議して、何が子供にとって望ましいかという観点から慎重に判断していただきたいと思います。