最近新聞によく出てくる下請法違反

   

最近新聞によく出てくる下請法違反、何に気をつければよい?


相談者 MSさん

  • イラストレーション・いわしま ちあき

 「こんなひどい売り上げが続いたら、社員全員の首を切って、俺は首をくくるか、飛び降りるしかないかも」と社長が突然、朝礼で物騒なことを言い始めました。

 勤務先のスーパーでは、売り上げが落ちてくると社長お得意の“自虐ネタ”が始まります。もちろん本気で言っているわけでなく、仕入れ兼販売促進担当の私に「何か考えろ」とプレッシャーをかけているのです。

 「生命保険に何口も入っているから、それで借金はチャラだよ」。過激な発言は続きます。専務でもある社長の奥さんは笑いながらも、「困った」というような顔をして聞いています。

 うちのスーパーは小さな八百屋からスタートしただけに、地元密着型のサービスがウリです。お年寄りの自宅に無料で配達するサービスなどで、なんとか大型スーパーに対抗して生き残っています。しかし、こまごまとしたサービスだけでは、限界があります。やはり値段が一番大きな武器となるのです。大手に対抗するためには、客寄せとなる激安商品の投入が欠かせません。

 そこで、私が目をつけたのが、プライベートブランド商品(PB商品)です。

 昔は、PB商品といえば、「安かろう悪かろう」というイメージでしたが、今や、「セブンプレミアム」や「トップバリュ」など、高品質になり、デパートにも置かれている程です。PB商品は、宣伝・営業費用や卸売業者などが不要であるために、いわゆるナショナルブランド商品よりも利幅が大きく、しかも自由な価格設定ができるために、大手小売店ではもはやPB商品が主力になりつつあると聞いています。

 私は早速、知り合いのメーカーに連絡して相談したところ、彼らとしても一定量の販売が確約されることによってコスト削減が可能となるばかりか、工場稼働率を上げることができるのでぜひやらせてほしいとのことでした。話はトントン拍子に進みました。早速、私は当社の売り場責任者らと企画内容や仕様の詳細を検討した結果、うちのスーパーの名前を冠したブランド商品として生産を依頼し、納入してもらうことになりました。

 そして、第1弾で納品され、今年のゴールデンウイークの特売品の一つに選ばれたのが、“ソース焼きそば”でした。バーベキューや行楽弁当の一品として欠かせないのが、ソース焼きそばです。名の知れた食品メーカーの商品だと、高くて250円くらい、セール品で128円くらいです。この値段では、特売品としてインパクトに欠けるので、思いきって小売値88円で売り出すことにしました。

 実際にかなりの数を売るつもりでした。しかし、今年のゴールデンウイークは雨続きで、バーベキューや弁当用にははけず、たたき売りしても、大量の在庫が残る始末でした。倉庫には、うちのスーパーのロゴ入りの焼きそばだらけです。

 「申し訳ない。これ、あんまり売れなかったから、仕入れ値をいくらか安くしてくれないでしょうかね」

 商品発注後の値引きは、この業界では日常茶飯事です。業者もこれからの付き合いもあるので、いくぶん“勉強”してくれるのです。

 ところが、この業者は違ったのです。「ダメです。PB商品なので、おたく、それじゃ下請法違反になっちゃいますが」と言うのです。

 私も下請法については何となく知っていましたが、「大企業による零細企業いじめ」を取り締まる法律というイメージがあり、問題となるのは主に製造業者であって、うちのような中小の小売業にはあまり関係ないと思っていました。

 ところが、よく調べてみると、小売り大手が下請け代金の減額を強要し下請法違反を問われたと新聞に出ており驚きました。名前が出た会社は、いずれも私もよく買い物をするような名前の知られたところが多く、そういう会社が、あえて法律違反を犯すとも思えません。また、新聞記事によると、必ずしも、大企業と零細企業との間で問題になるわけでもないようであり、場合によっては、うち程度の企業であっても下請法違反になり得るようです。

 うちは、地元客を相手に信頼を積み重ねて地道に商売をしてきており、商品の仕入れ先ともずっとうまくやってきていると自負していますが、万が一、下請法違反で新聞にでも名前が出たりしたら、信頼に傷がつき、倒産にも至りかねないと心配しています。

 下請法について、どのような法律なのか、また、どのような点に気をつければよいかを教えてもらえますか?(最近の事例を参考に創作したフィクションです)

回答


卸・小売業者における下請法違反の多発

 公正取引委員会は、5月30日、平成23年度における下請法の運用状況について発表しました。それによれば、平成23年度の勧告件数は、平成16年4月の改正下請法施行以降最多の18件、このうち、製造委託等が15件、役務委託等が3件であり、特に、製造委託等15件の内、3分の2にあたる、実に10件が卸・小売業者によるプライベートブランド商品(PB商品)等の製造委託にかかわるものでした。ちなみに、勧告の対象となった違反行為類型の内訳としては、下請代金の減額が大半を占めています。また、平成23年度の指導件数は、前年度比2%増の4326件であり、こちらも、勧告件数と同様に、改正下請法施行以降最多となっています。

今や、下請法は企業におけるコンプライアンスの重要なテーマに

 下請法とは、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といい、「下請代金の支払遅延等を防止することによって、親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに、下請事業者の利益を保護し、もつて国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする」(下請法第1条)法律です。

 今や、企業において、下請法は、コンプライアンス体制構築における重要なテーマとなっており、その対象となりうる業界では、下請法違反とならないよう、体制の拡充が進んできています。公正取引委員会も、ガイドブックなどで「企業の法令遵守じゅんしゅが強く叫ばれる中、下請法違反は企業価値を大きく損なう行為です」と強く警告しています。

 ただ、それでも、旧来の慣行が実は下請法違反になることを知らず、担当者が、罪の意識(法律違反との認識)を全く持たずに、その業界における従前どおりの処理を機械的に行っていく中で、後日、それが実は、下請法違反に該当することが指摘されるという事態も発生しています。

 その代表例が、卸売業、小売卸売業者によるPB商品の製造委託です。下請法違反の近時の増加については、長引く景気低迷で下請業者にしわ寄せがきているという見方もできるでしょうが、少なくともPB商品における下請法違反事件に関して言えば、必ずしもそのような背景が主たる原因となっているわけではありません。むしろ、担当者の下請法に関する理解不足による「うっかりミス」が、事件に発展したという側面が強いのです。

 公正取引委員会は、「近年では、卸売業や小売業におけるPB商品の取扱いが増えている一方で、PB商品の製造委託取引が下請法の適用を受ける取引であるということが、まだ十分に浸透していないということも、ここ数年の勧告件数の増加につながっている理由の一つではないかと考えております。」とコメントし、今後、その点に関して、積極的な啓発活動を実施する旨を指摘しています。

 そこで、なぜ、近時、PB商品における下請法違反の多発というような事態が起こったのかについて、下請法全般の一般的説明を行った上で、PB商品と下請法の関係について取りあげてみたいと思います。

下請法の対象となる「取引内容」

 下請法の適用対象となるか否かは、「取引の内容」と「取引当事者の資本金の規模」によって画一的に判断されます。後述するように、この「画一的判断」というところが、下請法のポイントとなります。

 まず、下請法の対象となる取引の内容としては、<1>製造委託(下請法2条1項)<2>修理委託(2条2項)<3>情報成果物作成委託(2条3項)<4>役務提供委託(2条4項)の4類型があり、概略、次のように説明することができます。

 <1>「製造委託」とは、物品の販売や製造を営む事業者(製造業者のほか商社や百貨店等の販売事業者も含まれます)が、規格・品質・性能・形状・デザイン・ブランドなどを細かく指定して、他の事業者に対し、物品(その半製品、部品、附属品、原材料及びこれらの製造に用いる金型を含みます)の製造や加工などを委託することなどをいいます。なお、ここでいう「物品」とは、動産のことを指しており、家屋などの建築物は対象に含まれていません。

 <2>「修理委託」とは、物品の修理を請け負っている事業者が、その修理を他の事業者に委託したり、自社で使用する物品を自社で修理している場合に、その修理の一部を他の事業者に委託することなどをいいます。

 <3>「情報成果物作成委託」とは、ソフトウエア、映像コンテンツ、各種デザインなど、情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託することをいいます。情報成果物には、物品の付属品、内蔵部品、物品の設計・デザインに関わる作成物全般を含んでいます。

 <4>「役務提供委託」とは、運送やビルメンテナンスをはじめ、各種サービスの提供を行う事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託することをいいます。

下請法の対象となる取引当事者の関係

 もともと、下請法は、下請取引における親事業者の優越的地位の濫用らんようを規制するために制定された法律であり、上記のような「取引」に該当した場合であっても、対等な関係であれば、本来、下請法の問題は出てきません。

 ただ、取引上優越した地位にあるかどうかを個別具体的に判断していたのでは、時間がかかり、迅速かつ効果的な規制を実現することが困難となるので、下請法は、「取引当事者の資本金の規模」を基準として、規制対象になる親事業者、及び保護の対象である下請事業者を明確にしています。従業員数、売上高、純資産額といった数字は、少なくとも、下請法においては関係ないわけです。

 まず、<1>の製造委託、<2>の修理委託、<3>の情報成果物作成委託のうち、プログラム作成にかかわるもの、<4>の役務提供委託のうち、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理にかかわるものの場合には、次の関係にある場合に下請法の対象となります。

 (1)親事業者が資本金3億円超の法人事業者であり、下請事業者が資本金3億円以下の法人事業者又は個人事業者であった場合

 (2)親事業者が資本金1千万円超3億円以下の法人事業者であり、下請事業者が資本金1千万円以下の法人事業者又は個人事業者であった場合

 これに対して、<3>の情報成果物作成委託のうち、プログラム作成に係るものを除いたもの、<4>の役務提供委託のうち、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に係るものを除いたものの場合には、次の関係にある場合に下請法の対象となります。

 (3)親事業者が資本金5千万円超の法人事業者であり、下請事業者が資本金5千万円以下の法人事業者又は個人事業者であった場合

 (4)親事業者が資本金1千万円超5千万円以下の法人事業者であり、下請事業者が資本金1千万円以下の法人事業者又は個人事業者であった場合

 以上のように、下請法は、規制対象となる親事業者、保護の対象となる下請事業者を、「資本金」という明確な基準によって、あらかじめ法定してあるわけです。

 どんなに事業が不振で経営難に陥っており、何とか仕事にありつきたいと思っている、本来は弱い立場の事業者であっても、資本金が一定以上であれば、親事業者としての規制を受けて、下請事業者としての保護は受けられませんし、逆に、資本金さえ小さければ、事業が好調で非常に経済的に優位に立っている事業者であっても、親事業者としての規制を受けず、下請事業者としての保護を受け得るわけです(独占禁止法における「優越的地位の濫用の禁止」の議論はここでは割愛します)。

 ご相談者は、地元客を相手に小さなスーパーを経営しているとのことですが、前記区分の「資本金3億円超の法人事業者」には該当しないかもしれませんが、「資本金1千万円超3億円以下の法人事業者」には該当する可能性があると思われます(「1千万円超」ですから1千万円ちょうどであれば親事業者には該当しませんが、1円でも超えれば親事業者に該当します)。そうなると、取引先が「資本金1千万円以下の法人事業者又は個人事業者」である場合には、下請法の対象である「親事業者」と「下請事業者」の関係になり得るので注意が必要です。ちなみに、近時、下請法との関係で、会社設立や増資の際に、意図的に資本金を1千万円以下に抑えるということもあるようですし、また逆に、親密な取引先企業のことをおもんぱかって、あえて増資をすることによって下請法の適用対象から自ら外れようとしたりする事象もあるようです。

 このように、事業の実態にかかわらず、資本金の額だけで、下請法の適用の有無を判断するという制度にはやや違和感もありますが、前述のように、一々個別ケースごとに優越的地位の濫用があったかどうか時間をかけて判断するわけにもいかず、迅速かつ効果的な規制を実現するという法の趣旨からすれば、やむを得えないと思われます。

 なお、上記資本金区分において親事業者に該当しなくとも、当該事業者が、ある会社の子会社であり、親会社が、その子会社を通じて委託取引を行っている場合には、一定の要件を満たせば、その子会社が、親事業者とみなされて、下請法の適用を受けることがあるので注意が必要です(トンネル会社規制)。

下請法が要求する親事業者の義務

 下請法の対象となる取引に該当する場合、親事業者には、次のような義務が課されることになります。

 <1>発注に際して取引内容に関する具体的記載事項を全て記載した書面を直ちに交付する義務(3条)

 このように、発注に際して書面の交付が義務付けられているのは、口頭による発注だと発注内容や支払条件が不明確でトラブルが生じやすく、その場合、下請業者が不利益を受けることが多いので、発注内容や支払代金の額、支払期日等を明確に記載した書面を、発注のつど、下請業者に交付することにより、トラブルを事前に防止し、下請取引の公正化を図るためです。

 <2>下請代金の支払期日を事前に定める義務(2条の2)

 物品等を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日以内の出来る限り短い期間内において、下請事業者との合意の下に下請代金を支払う期日を定めなければなりません

 <3>書類の作成・保存義務(5条)

 下請事業者に対して製造委託、修理委託、情報成果物作成委託又は役務提供委託をした場合は、給付の内容、下請代金の額等について記載した書類を作成し、2年間保存しなければなりません。

 <4>遅延利息の支払義務(4条の2)

 支払期日までに下請代金を支払わなかったときは、物品等を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について、その日数に応じて遅延利息(未払金額に年率14.6%を乗じた額)を支払わなければなりません。

 親事業者が、発注書面を交付する義務、取引記録に関する書面の作成・保存義務を守らなかった場合には、親事業者の代表者・担当者個人が50万円以下の罰金に処せられるほか、会社自体も50万円以下の罰金に処せられると規定されています(ただし、現時点までこれらの罰則が適用された例はありません)。

下請法が要求する親事業者の禁止行為

 下請法の対象となる取引に該当する場合、親事業者には、次の各行為が禁止されます。

<1>受領拒否(4条1項1号)

<2>下請代金の支払遅延の禁止(4条1項2号)

<3>下請代金の減額の禁止(4条1項3号)

<4>返品(4条1項4号)

<5>買いたたき(4条1項5号)

<6>購入・利用の強制(4条1項6号)

<7>報復措置(4条1項7号)

<8>有償支給原材料等の対価の早期決済(4条2項1号)

<9>割引困難な手形の交付(4条2項2号)

<10>不当な経済上の利益の提供要請(4条2項3号)

<11>不当な給付内容の変更・やり直し(4条2項4号)

 公正取引委員会、中小企業庁長官、当該下請取引にかかわる事業の所管省庁の主務大臣には、一定の場合に親事業者に対する調査・検査の権限が認められており(9条)、この調査・検査を拒んだ場合には、50万円以下の罰金に処せられることになります。そして、中小企業庁長官は、調査の結果、親事業者が禁止行為を行っていると認めるときは、公正取引委員会に適当な措置をとるよう求めることができるとされています(6条)。また、公正取引委員会は、親事業者が禁止行為を行っていると認めるときは、親事業者に対して、必要な措置をとるべきことを勧告することができるとされています(7条)。

PB商品の製造委託の問題点

 これまで、下請法に関してご説明してきましたが、下請法の対象となる「取引内容」のところを見ていただければお分かりのように、「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」とあり、基本的には小売業は含まれていません。しかし、基本的に下請法の適用を受けないはずの小売業であっても、PB商品を始めると、そういうわけにはいかなくなります。

 PB商品とは、小売業者や卸売業者が企画して、自ら生産するか、仕様書発注に基づいて製造業者に生産させて、独自のブランド(商標)で販売する商品のことで、自主企画商品とも呼ばれています。

 下請法の対象となる取引である「製造委託」とは、物品の販売や製造を営む事業者が、規格・品質・性能・形状・デザイン・ブランド等を細かく指定して、他の事業者に対し、物品の製造や加工などを委託することですから、PB商品を仕様書発注に基づいて製造業者に生産させる場合は、まさに「製造委託」に該当することになります。

 そして、前述のように「親事業者が資本金3億円超の法人事業者であり、下請事業者が資本金3億円以下の法人事業者又は個人事業者であった場合」「親事業者が資本金1千万円超3億円以下の法人事業者であり、下請事業者が資本金1千万円以下の法人事業者又は個人事業者であった場合」においては、下請法が適用になり、親事業者には、下請法の定める義務が課せられるとともに、同法所定の行為が禁止されることになるわけです。

 小売業者や卸売業者が製造業者から商品を購入する(仕入れをする)場合、メーカーブランドの商品であれば、下請法の対象となる取引内容ではないため、発注の際に書面を交付しないで口頭で発注することも可能ですし、発注後の代金減額交渉や商品受領後の返品も、契約自由の原則から、当事者同士の交渉として認められています。小売業界では、メーカーブランドの商品の取引の場合、従来、発注後の代金減額交渉や商品受領後の返品が商慣習として製造業者も納得して行われてきたと言われています。

 しかし、小売業者や卸売業者が仕様を決めて発注するPB商品の取引の場合には、「製造委託」として下請法の適用を受けるため、従来の商品取引の場合と同じ商慣習に基づいて発注後の代金減額交渉や商品受領後の返品を行うと、下請法違反となってしまうわけです。

 小売業者は、従来、下請取引の経験が少なかったために、PB商品の取引の場合にも、下請法の対象となることに気付かず、特に下請けいじめというような意識などなく、他の取引と同じように、発注後の代金減額交渉や商品受領後の返品を行ってしまうケースがあり、それが今回、下請法違反で勧告を受けるという事態を招いているわけです。

下請法違反による企業名の公表は致命傷になりかねない

 公正取引委員会は、事業者が下請法に違反した場合、それを取りやめて原状回復させること(減額分や遅延利息の支払い等)を求めるとともに、再発防止などの措置を実施するよう、勧告・公表を行っています。この処分について、公正取引委員会は、そのHPで適宜公表しており、たとえば、平成24年3月27日に勧告を受けた100円ショップのチェ-ン展開を行う(株)大創産業については、次のように違反事実の概要が指摘され、事案の詳細も説明されています。

 「大創産業は、日用品等の製造を下請事業者に委託しているところ、…下請事業者に責任がないのに、当該下請事業者に支払うべき下請代金の額を減じていた。減額した金額は、下請事業者178名に対し、総額2億7946万2435円である。」

 言うまでもなく、このように公正取引委員会により、企業名が公表されると、当該企業にとっては極めて大きなダメージになります。

 対象法律は異なりますが、平成13年2月に、大手ゴルフ用品メーカーの本間ゴルフが、製造販売するゴルフクラブをインターネット上で販売するにつき、不当な二重価格表示を行っていたとして、公正取引委員会は、景品表示法違反で、排除命令を出し、新聞等で大きく報道されました。その後、平成17年6月に、同社が東京地裁に民事再生の申し立てを行い事実上倒産しましたが、公取が実名公表することによる対外的信用の低下もその遠因であると言われています。

下請法には常に目配りを

 ご相談者は、地元客を相手に信頼を積み重ねて地道に商売をしてきているとのことであり、それほど大規模に商売を行っているわけではないかもしれません。また、商品の仕入れ先ともずっとうまくやってきているとのことであり、その優越的な地位を利用して、取引先に不利益を強いるような態度を取ることなど全く考えてもいないと思います。

 しかし、前述のように、親事業者(ご相談者の会社になります)が資本金1千万円超3億円以下の法人事業者であり、下請事業者(取引先になります)が資本金1千万円以下の法人事業者又は個人事業者であった場合には、下請法の適用対象となり得ます。

 また、PB商品の例を見てもお分かりのように、小売業者であるからといって、下請法の適用対象とならないわけではなく、取引内容によっては、下請法の対象となる取引に該当する可能性があるのです。そして、万が一、ご相談者の会社名が下請法違反で公表されるようなことになれば、それにより受けるダメージは極めて大きなものとなり、せっかく地元で地道に築き上げてきた信用を全て失う恐れもあります。

 そういう意味では、ご相談者も、自分のところには関係ないと安易に思わず、下請法については常に目配りして、万が一の事態にならないように注意していくべきかと思います。なお、下請法については、公正取引委員会が、講習会などの各種取り組みを行っていますし、全国に相談窓口を設けていますので、仮に気になることがあれば、積極的に相談されてみることをお勧めします。

2012年06月13日 08時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

 

 


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