ネットショップから支払い済み商品が届かない 返金請求はネットモー

ネットショップから支払い済み商品が届かない 返金請求はネットモールに?

 相談者 R.Uさん

  • イラストレーション・いわしま ちあき

 私は“振り込め詐欺”の被害者です。だまし取られた金額は5000円程度ですが、悔しくて、悔しくて…。どうしたら振り込んだお金を取り戻せるのか、相談にのっていただきたいのです。

 ただ、振り込め詐欺といっても、「もしもしオレだけど」と親族や知人のふりをして電話をかけてくる、あの手口ではありません。

 事の発端は、ネットショップで見つけたおいしいそうな、本シシャモです。私は日本全国の様々な物産をネットで購入するのが大好きです。土日はネットサーフィンで各地の名物を取り寄せては、それをさかなに一杯やっています。そのときは、やっと手に入れた幻の焼酎「森伊蔵」に合う肴はないかと探していたら、あるネットショップで売っていた本シシャモが目についたというわけです。

 スーパーなどで売られているシシャモは「カペリン」という魚で、本物とは似て非なる別物です。本シシャモは味・食感とも素晴らしく、焼いたばかりのメスは、卵が口の中でとろけるような感覚です。

 本シシャモと森伊蔵――至福の晩酌の場面を思い浮かべつつ、30匹で5000円のメスのシシャモの購入を決め、銀行振り込みで代金を支払いました。あまり聞いたこともないネットショップで買い物をするのは不安なので、なるべく大手のネットショッピングモールにあるお店を利用しています。このときに利用したショップも問題ないと思ったのですが…。

 それから宅配便ドライバーがわが家を訪問するのを待っていました。ところが、商品はいつまでたっても送られてきません。ショップの案内では、「ご入金確認後、通常4営業日以内に商品を発送致します。」と表示されていました。“通常”とあるので、「商品によっては時間がかかるものもあるのだろう」と、自分を無理やりに納得させていました。1週間たったころ、「いくら何でも」と業を煮やして電話をかけたのですが、応答がありません。

 慌ててこのショップをネット検索したところ、代金を振り込んだのに商品を受け取っていない多数の被害者がいることが報道されていました。しばらくして、そのショップが倒産したことを新聞で知りました。かなり前から倒産するのを知っていて、代金を振り込ませたようです。悪質な手口で、立派な振り込め詐欺です。

 私はショッピングモールを信用して、モール内のショップから買い物をしたわけであり、ショップが倒産した以上、そのようなショップを入店させたモールにも責任の一端があると思います。そこで、支払った代金の返還を求めたいと思っています。

 先日、新聞に、商標を無断使用したグッズがネット販売された場合、そのショップの入っていたモールの運営元にも一定の責任があるとした判決が出たと書いてありました。この判決と同様に、やはりモール側にもある程度の責任があると思いますが、いかがでしょうか。(最近の事例を参考に創作したフィクションです)

 (回答)

ネット上での買い物のメリット、デメリット

 インターネットが世界中をつなぐようになった現代社会においては、昔のように、店舗を一々探して回らなくとも、ネットで検索することによって、自分の求めている商品を簡単に発見することができます。また、その商品がネットショップで取り扱われていれば、わざわざ買いに出かける必要すらなく、自宅のPC、携帯電話、タブレット端末等から、キーボードを操作したり、画面をクリックしたりするだけで注文して商品を取得することも可能です。

 ただ、言うまでもなく、このようにとても便利にネットで買い物ができるようになった反面、ネットでの取引であるが故のリスクも出てきます。

 ネットの場合、商品購入先のショップや購入する商品について得られる情報は、あくまでもPCなどの画面の中の映像や文字情報にすぎません。リアルの世界においては、我々が、初めて入った店舗で商品を購入しようとする際、店舗の構えや、品ぞろえ、清潔さ、店員さんの対応などを総合的に観察して、信用のおける店舗かどうかを判断し、購入するかどうかを決断します。

 それに対して、ホームページ上の店舗はとても立派に見え、そこに書かれている店舗紹介文に美辞麗句が並び立てられていても、実はアパートの一室で細々とやっていて今にも倒産しそうな状況にあるかもしれません。また、PCの画面に映っているのは、いかにも新鮮でおいしそうな「シシャモ」であっても、買ってみて実際に届いた商品は、予想した品質とは全く異なるものであるかもしれません。

 そこで、そういった不安を少しでも解消するため、検索エンジンで、欲しい商品を取り扱っているネットショップを複数発見した場合、その中から、全く知らないショップはなるべく避け、リアルでも展開している著名な企業が開設しているネットショップや、ご相談者のように、大手のネットショッピングモール(以下、「ネットモール」)内のショップを選ぶ人も多いかと思います。

 いわば、実際に店舗や商品に直接触れることができないことによる不安やリスクを、リアル世界での評判や、ネットモールに対する信用で穴埋めしているわけです。

 ただ、リアルでも展開している企業がネット上に開設しているショップの場合には、ショップの名前がどうであれ、取引の相手方はあくまでもその企業であることが普通です。従って、何かあれば、当該企業が責任をもって解決に尽力してくれるでしょう。一方、ネットモールの場合もそのように考えることができるのでしょうか。

 ネットモールの場合、上記の場合と異なり、ネットモール運営者と、実際のショップ運営者が別になりますので、ネットモール運営者の責任を、どこまで問えるかが問題となるわけです。

ネットモールは原則として責任を負わない

 ネットモールに出店している個別のショップとの取引で損害を受けた利用者が、当該ショップに対して契約上の責任などを追及できるのは当然のことです。ただ、本件ご相談のように、ショップが倒産してしまい、ショップの責任追及を事実上行うことが困難な場合、ネットモールの信用を当てにして取引をした利用者としては、その運営者に対して何らかの要求をしたいところです。

 ただ、この点については、原則として、個別のショップとの取引において、売り主としての責任を負うのは、あくまで当該ショップであり、その取引によって生じた損害について、ネットモール運営者が責任を負うことはないと考えられています。ネットモール内に入っているショップで購入したとしても、売買契約はあくまでも、その個別のショップとの間で成立しているのであって、商品の引き渡し義務といった売り主が負う義務はすべて、基本的にネットモール運営者ではなく、ショップが負うことになるからです。

 この点、ネットモールにおける規約には、その旨の説明が明記されているのが一般的です。例えば、日本最大のネットモールである「楽天市場」では、次のような説明をサイトに明記しています。

 <楽天サイトは、お客様に取引の「場」を提供するものです。お客様が楽天サイトを通して行う「取引」(お買い物、旅行・宿泊・ゴルフ等の予約、オークションへの参加、プレゼント応募、各ショップへの資料請求・問合わせ、掲示板の利用等をいいます)はすべてお客様と「サービス提供者」(ショップ、オークションの出品者、宿泊施設またはその代理店、提携ゴルフ場、楽天広場内のホームページ開設者等、取引の対象となる商品またはサービスを提供する者をいいます)との間で直接行っていただくものです。当グループ各社は、取引の当事者とはならず、取引に関する責任は負いません。したがって、万一取引に関してトラブルが生じた際には、お客様とサービス提供者との間で直接解決していただくことになります。>

 ご相談の事案でも、売買契約に伴う商品引き渡し義務の履行をしていないのは、契約当事者であるショップであり、ご相談者が売買契約の履行を求めていくことができるのも契約当事者であるショップに対してということになります。

 したがって、ネットモールの中に入っている個別ショップとの取引によって生じた損害について、ネットモール運営者は、原則として責任を負わず、本件事案でも、ご相談者は、ネットモール運営者に対し、ショップに支払った代金の返金を求めることはできないのが原則となるわけです。

ネットモールに対して責任追及できる場合もある

 ただし、例外的に、ネットモールの運営者に対して、責任追及をできる場合もあるとされています。

 ネットモールの事案ではありませんが、スーパーマーケットの店内でペットショップを営んでいたテナントからインコを購入したところ、このインコがオウム病クラミジアを保有していたため、間もなく、家族がオウム病性肺炎にかかり、主婦が死亡したという事案があります。最高裁まで争われ、判決ではテナントと出店契約を締結することにより、営業主体がスーパーマーケットであると誤認するのもやむを得ない外観を作出することに関与したとして、商法第14条の「自己の商号の使用を他人に許諾した商人の責任」の規定を類推適用して、スーパーマーケットの経営会社の責任を認めています(最高裁判所平成7年11月30日判決)。

 商法第14条の「自己の商号の使用を他人に許諾した商人の責任」というのは、<1>自己の名義を貸した者が営業主であるという外観の存在、<2>名義使用の許諾という自己の名義を貸した者の帰責事由の存在、<3>取引の相手方が重大な過失なくして自己の名義を貸した者が営業主であると誤認したことを要件として、自己の名義を貸した者も取引によって生じた債務を弁済する責任を負うことを規定したものです。

 このスーパーマーケットの事案では、<2>の名義使用の許諾という要件を明確には満たしていませんが、裁判所は、スーパーマーケットが営業主体であると誤認するのもやむを得ない外観の作出に関与したとして、商法第14条の類推適用を認めています。

 スーパーマーケットとテナントとの関係と、ネットモールとショップとの関係は類似していますので、ネットモールにおいても、<1>ショップによる営業をネットモール運営者自身による営業と利用者が誤って判断するのもやむを得ない外観が存在し、<2>その外観が存在することについてネットモール運営者に責任があり、<3>ネットモール利用者が重大な過失なしに営業主を誤って判断して取引をした場合には、商法第14条の「自己の商号の使用を他人に許諾した商人の責任」の規定が類推適用されて、ネットモール運営者が責任を負う場合もあり得ると考えられます(「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」経済産業省)。

 したがって、本事案の場合にも、<1>から<3>までの要件を満たす状況であれば、ご相談者としても、ネットモールの運営者に対して、ショップに支払った代金の返金を求めることを検討されてもよいかもしれません。

 ただ、さきほど引用した楽天のサイト上の説明のように、多くのネットモールのサイトでは、利用者が容易に認識できるわかりやすい場所に、ネットモールに出店しているショップがネットモールとは独立した事業者である旨や、サイトを通して行う取引においてネットモール自体が取引当事者とはならない、取引に関する責任は負わない旨――などが明記されています。このため、商法第14条の類推適用により、ネットモール運営者に対して責任を追及できるケースは、極めて限定的だと考えられます。

それ以外でネットモール運営者に責任追及できる場面

 前記商法第14条の類推適用以外でも、ネットモール運営者の責任を追及することができる場合もあると考えられています。

 例えば、<1>重大な製品事故の発生が多数確認されている商品の販売がショップで行われていることをネットモール運営者が知りながら、合理的期間を超えて放置した結果、当該ショップからこの商品を購入したモール利用者に、同様の製品事故による損害が発生した場合などです。不法行為責任やモール利用者に対する注意義務違反に基づき、ネットモール運営者の責任を追及できる可能性があります。この点は、後述の商標権侵害についての楽天に関する判例が参考になりますので、そちらもご参照してください。

 また、<2>ネットモール運営者がモール利用者に対し、単なる情報提供や紹介を超えて特定の商品などの品質等を保証したような場合、当該商品の購入によって生じた損害について、ネットモール運営者が責任(保証に基づく責任)を負う可能性があるとされています。

 ただし<2>の場合、以下のケースでは、ネットモール運営者が責任を負うことは原則としてないと考えられますので、適用場面は限定されると思われます(「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」経済産業省)。

 (1)ネットモール運営者の判断が入らない形で商品またはショップの広告を掲載しているにすぎないような場合(2)よく売れている商品に「売れ筋」と表示する際、売上高やモール利用者による人気投票結果などのデータに基づいた商品や店舗の「ランキング」「上半期ベスト3」などを表示する場合(3)モール利用者の購買履歴などに基づいて個々のモール利用者に対して、当該モール利用者の嗜好や購入商品などに関連する商品などを当該商品の品質などに関する判断を含まない形で表示する場合――などです。

商標権侵害について楽天に一定の責任を認めた判例も

 ご相談者が指摘しているように、平成24年2月14日、東京高等裁判所(知財高裁)は、自己の商標を無断使用したグッズがモール内のショップでネット販売されていた場合に、そのショップの入っていたモールの運営会社にも一定の責任がある旨を判示しました。

 この事件は、棒付きキャンディー「チュッパチャプス」(Chupa Chups)の商標を管理するイタリアの企業が、そのロゴが無断使用されたマグカップや帽子などが楽天市場で販売されているとして、販売していたショップではなく、ネットモール運営者である楽天に対して、商標法又は不正競争防止法に基づく販売差し止めと、不法行為(民法第709条)又は不正競争防止法に基づく損害賠償を求めた事案です。

 この事件は、モール利用者がネットモール運営者の責任を追及した事案ではないのですが、1審の東京地方裁判所が、そもそも楽天が当事者ではないとして請求棄却したのに対して、一定の条件を満たせば、ネットモール運営者にも責任が生じる可能性があるとした点で非常に興味深い内容となっています。

 つまり、東京高等裁判所は、結論としては、ネットモール運営者である楽天の責任は認めませんでしたが、次のように判示しています。

 「ウェブサイトにおいて複数の出店者が各々のウェブページ(出店ページ)を開設してその出店ページ上の店舗(仮想店舗)で商品を展示し、これを閲覧した購入者が所定の手続を経て出店者から商品を購入できる場合において、上記ウェブページに展示された商品が第三者の商標権を侵害しているときは、商標権者は、直接に上記展示を行っている出店者に対し、商標権侵害を理由に、ウェブページからの削除等の差止請求と損害賠償請求をすることができることは明らかであるが、そのほかに、ウェブページの運営者が、単に出店者によるウェブページの開設のための環境等を整備するにとどまらず、運営システムの提供・出店者からの出店申込みの許否・出店者へのサービスの一時停止や出店停止等の管理・支配を行い、出店者からの基本出店料やシステム利用料の受領等の利益を受けている者であって、その者が出店者による商標権侵害があることを知ったとき又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは、その後の合理的期間内に侵害内容のウェブページからの削除がなされない限り、上記期間経過後から商標権者はウェブページの運営者に対し、商標権侵害を理由に、出店者に対するのと同様に差止請求と損害賠償請求をすることができると解するのが相当である。」

 この判決が前提とする事案は本件とは異なりますが、この判決の述べる一般論を前提とした場合、ご相談者の利用したネットモールが、東京高等裁判所が判示するような形態で運営されており、特定のショップに重大な問題(代金を振り込んだのに商品を受け取っていない多数の被害者が出ていること、経営状態が悪化して倒産するのが明白であるのに代金を振り込ませているようなことなど)があることをネットモール運営者が知ったとき、または知ることができたときから、合理的期間内に、何ら是正措置がとられていなかったような場合には、ネットモール運営者に対して、一定の責任を追及することができる可能性はあるとも考えられます。

 ちなみに、上記判決では、楽天が商標権侵害の事実を知ったときから「8日以内」に是正措置を取ったことをもって、「合理的期間内にこれを是正したと認めるのが相当である」と判示しており、一つの基準として参考になるかと思われます。

 上述のように、ネットモール運営者に対して、ショップに支払った代金の返金を求めることができるのは非常に例外的な場合であり、諸々の事情を総合判断する必要があり、ご相談者の場合については確定的な回答をご提示することはできませんが、上記説明を参考にして、場合によっては、ネットモール運営者に対応協議を求められることを検討してもよいかもしれません。

2012年03月28日 09時39分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

 

 

 


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