女性活躍推進法の施行、何が変わる?

相談者 J.Kさん

 私は中堅の建設会社に勤めるワーキングマザー。学生時代にスポーツをやっていたせいか、体を動かすことが好きで、現場にもよく出かけます。ビルの建設現場で工事の進み具合をチェックしたり、安全管理がきちんとできているかを確認したりとなかなか忙しい毎日です。

 先日、同期の男性社員から「課長昇進が決まったんだってな。おめでとう」と言われました。私はまったく聞いていなかったことなので、びっくりしていると、「これからは、いわゆる女性枠でどんどん昇進していけると思うよ。同期の期待の星だな」と肩をぽんと叩かれました。先を越されたせいか、彼の話し方には少々複雑な気持ちも含まれていた気がします。

 「私はこうやってヘルメットをかぶって現場に出かけることができたら、それでいいんだけど」。私は今の正直な気持ちを話したのですが、彼はとりあってくれません。管理職になると、部下をたくさん抱えて責任も重くなりそうです。今までは紅一点ということで先輩からもかわいがってもらえましたが、上司になったらそういう人たちに指示を出さなくてはなりません。言うことを聞いてもらえるか心配です。

 彼に、どうして会社が急に女性の登用に積極的になったのか聞いてみました。何でも女性の職場における活躍を推進する法律が昨年8月に成立して、今年の4月1日までに、企業は、採用者や管理職に占める女性の割合といった数値目標を含む行動計画を作って公表する必要があるのだそうです。公表する以上は、女性が活躍できる職場であることをアピールしたいという、会社の考えも理解できます。この法律の内容と、法律の施行で何が変わるか教えてください。(最近の事例をもとに創作したフィクションです)

(回答)

大企業に女性登用の数値目標設定を義務づけ

 大企業に対し女性登用の数値目標を作るように義務づける「女性活躍推進法」(正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」)が、昨年8月28日に成立し、同日、施行されました。また、相談者が指摘する、事業主による行動計画の策定については、今年4月1日施行となっています。つまり、同法によって、従業員301人以上の企業などは、採用者や管理職に占める女性の割合といった数値目標を含む行動計画を、4月1日までに策定、届出、公表しなければなりません。ちなみに、従業員300人以下の企業は努力義務となっていますが、同301人以上の企業だけでも全国に1万2000社もあり、それら多くの企業が、対応を迫られているわけです。

 この数値目標の設定によって、女性の採用や昇進の機会を増やし、安倍政権の最重要課題の一つである「女性が輝く社会」を実現することを目指しています。

 こうした動きに呼応し、企業は、様々な行動計画を、自社ホームページなどで公表しています。例えば、東急電鉄は、「女性社員の管理職登用については、2020年度までに、2014年度比較倍増(40人)を目標とします」「役員登用による女性の経営への参画も目指していきます」などと掲げています。

 相談者の勤務する会社が、最近になって急に、女性の登用に積極的になったとすれば、上記法律が成立し、それに伴って、大企業が4月1日までに行動計画を公表しなければならないことが影響していると思われます。

 ただ、この法律については罰則規定がなく、また各企業の実情に応じて、数値目標を自主的に決められるようになっていることから、その実効性を疑問視する声もあります。つまり、安易な目標を設定したり、計画を策定するだけに終わって、きちんと実行しなかったりする事態が懸念されているわけです。

 また、ある企業が今年2月、「女性活躍推進法」をテーマに、主婦会員に向けアンケート調査を行ったところ、89%が同法律を「知らない」と回答し、また、同法によって女性がより活躍できる社会になることに対して、63%が「期待していない」と回答するなど、まだまだ世間での認知度や期待は低いのが現状です。

 以下、女性の社会進出の後押しとして期待がかかる「女性活躍推進法」について説明したいと思います。

女性活躍推進法制定の背景

 2014年6月に閣議決定された「「日本再興戦略」改訂2014-未来への挑戦-」では、「『2020年に指導的地位に占める女性の割合30%』の実現に向けて、女性の活躍推進の取り組みを一過性のものに終わらせず、着実に前進させるための新たな総合的枠組みを検討する。具体的には、国・地方公共団体、民間事業者における女性の登用の現状把握、目標設定、目標達成に向けた自主行動計画の策定およびこれらの情報開示を含め、各主体がとるべき対応等について検討する。さらに、各主体の取り組みを促進するため、認定などの仕組みやインセンティブの付与など実効性を確保するための措置を検討する。これらについて今年度中に結論を得て、国会への法案提出を目指す。」とされており、これに基づいて「女性活躍推進法」が制定されました。

 上記「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%」(通称「2020年30%目標」)は、03年6月、男女共同参画推進本部の決定として示されました。この目標は、社会のあらゆる分野において、20年までに、指導的地位(議会議員、法人・団体等における課長相当職以上の者、専門的・技術的な職業のうち特に専門性が高い職業に従事する者など)において、女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標であり、目標決定後、その達成に向けて色々な施策が講じられてきました。

 しかし、「データブック国際労働比較2015」によれば、13年の日本における全就業者に占める女性の割合は42.8%と、欧米諸国と比較して大差ありませんが(アメリカ47%、フランス47.9%、スウェーデン47.6%、イギリス46.5%、ドイツ46.3%)、管理職に占める女性の割合は11.2%と、欧米諸国と比較してかなり低い水準にとどまっています(アメリカ43.4%、フランス36.1%、スウェーデン35.4%、イギリス33.8%、ドイツ28.8%)。アジア諸国においても、フィリピン47.1%、シンガポール33.7%、マレーシア22.0%を女性が占めている中、日本と韓国(11.4%)だけが低い水準に止まっているのが現状です。

 また、15歳から64歳までの女性の就業率は徐々に増加していますが(14年で63.6%)、長時間労働を前提とした労働慣行などを原因として、仕事と生活の両立ができず、今の仕事を継続したり、キャリアアップを目指したりすることを諦める女性も多いと言われ、約6割の女性が第1子出産を機に離職しています。育児・介護などを理由に働いていないものの、就業を希望している女性は303万人にも上ります(内閣府男女共同参画局資料)。

 こうした現状を背景にして、第2次安倍内閣は、女性の活躍推進を最重要課題の1つとして掲げていることから、依然として存在する、男女格差の問題を解消すべく、「2020年30%目標」達成に向けた取り組みを着実に進めるための法的枠組みとして、「女性活躍推進法」が生まれたわけです。ちなみに、同法は、14年秋の臨時国会に提出されましたが、衆議院解散に伴い廃案となり、その後、昨年8月28日にようやく成立しました。

「女性活躍推進法」の目的

 この法律の目的は、自らの意思によって職業生活を営み、または営もうとする女性の個性と能力が十分に発揮されることが一層重要となっていることにかんがみ、(1)女性の職業生活における活躍の推進について基本原則を定め、(2)国、地方公共団体および事業主の責務を明らかにするとともに、(3)女性の職業生活における活躍の推進に係る基本方針及び事業主の行動計画の策定、女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置などについて定めることによって、女性の職業生活における活躍を推進し、豊かで活力ある社会の実現を図ることとされています。

 そして、(1)の基本原則とは、以下のような内容を意味します。

 (a)女性の職業生活における活躍の推進は、職業生活における活躍に係る男女間の格差の実情を踏まえ、採用、教育訓練、昇進、職種および雇用形態の変更その他の職業生活に関する機会の積極的な提供及びその活用を通じ、かつ、性別による固定的な役割分担等を反映した職場における慣行が女性の職業生活における活躍に対して及ぼす影響に配慮して、自らの意思によって職業生活を営み、または営もうとする女性の個性と能力が十分に発揮できるようにすることを旨として行うこと。

 (b)女性の職業生活における活躍の推進は、家族を構成する男女が、男女の別を問わず、相互の協力と社会の支援の下に、家庭生活における活動についてその役割を果たしつつ職業生活における活動を行うために必要な環境の整備等により、男女の職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立が可能となることを旨として行うこと。

 (c)女性の職業生活における活躍の推進に当たっては、女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと。

基本方針の策定

 「女性活躍推進法」においては、政府は、上記基本原則にのっとり、女性の職業生活における活躍の推進に関する基本方針を定め、閣議決定しなければならないと規定されています。

 これを受けて、15年9月25日に閣議決定がなされており、以下のような事項について基本方針が策定されています。

 (1)女性の職業生活における活躍の推進に関する基本的な方向

 (2)事業主が実施すべき女性の職業生活における活躍の推進に関する取り組みに関する基本的な事項

 (3)女性の職業生活における活躍の推進に関する施策

 たとえば、(1)では、事業主の取り組みに必要な視点として、(a)トップが先頭に立って意識改革・働き方改革を行う、(b)女性の活躍の意義を理解し、積極的に取り組む、(c)働き方を改革し、男女ともに働きやすい職場を目指す、(d)男性の家庭生活への参画を強力に促進する、(e)育児・介護等をしながら当たり前にキャリア形成できる仕組みを構築する、と記載されているほか、(2)では、男女を通じた働き方改革への取り組み、女性の採用から登用までの各段階の課題に応じた取り組み、職業生活と家庭生活の両立に関する取り組みの更なる推進、ハラスメントへの対応、また(3)では、女性の職業生活における活躍の推進に積極的に取り組む企業に対するインセンティブの付与、希望に応じた多様な働き方の実現に向けた支援措置、男性の意識と職場風土の改革、職業生活と家庭生活の両立のための環境整備、ハラスメントのない職場の実現など、23ページにわたって、詳細に定められています。

事業主行動計画の策定等

 さらに、内閣総理大臣、厚生労働大臣及び総務大臣は、基本方針に即して、事業主行動計画の策定に関する指針を策定し公表しなければならないとされています。

 これに基づき、内閣総理大臣、厚生労働大臣および総務大臣は、15年11月20日に「事業主行動計画策定指針」を決定し告示しています。同指針では、女性の活躍のために解決すべき課題に対応する以下の項目に関する効果的取り組みなどを規定しています。

 (1)女性の積極採用に関する取り組み
 (2)配置・育成・教育訓練
 (3)継続就業に関する取り組み
 (4)長時間労働是正など働き方の改革に向けた取り組み
 (5)女性の積極登用・評価に関する取り組み
 (6)雇用形態や職種の転換に関する取り組み(パート等から正規雇用へ、一般職から総合職へなど)
 (7)女性の再雇用や中途採用に関する取り組み
 (8)性別役割分担意識の見直し等職場風土改革に関する取り組み

 各企業は、同指針で規定された効果的な取り組みなどを参考にして、自社の課題解決に必要な取り組みを選択して、行動計画を策定しなければなりません。

 常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主に対しては、行動計画策定にあたり、今年4月1日までに、(1)自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析、(2)状況把握・課題分析を踏まえた行動計画の策定・届出・公表、(3)女性の活躍に関する状況の情報の公表、などが義務付けられています。

自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析

 行動計画の策定にあたっては、まず、自社の女性の活躍に関する状況に関して、状況把握・課題分析を行う必要があります。課題分析にあたっては、必ず把握すべき項目である基礎項目の状況分析・課題分析を行い、その結果、事業主にとって課題であると判断された事項については、必要に応じて把握する項目である選択項目を活用して、さらにその原因の分析を深めるべきとされています。

 女性の活躍に向けた課題の中で多くの企業に該当する課題である、女性の採用の少なさ、第1子出産前後における女性の継続就業の困難さ、男女を通じた長時間労働による仕事と家庭の両立の難しさ、また、女性の活躍を図る重要な指標である管理職に占める女性割合の低さについて、状況把握・課題分析を行う観点から、基礎項目として、次のものが定められています。

 (a)採用した労働者に占める女性労働者の割合
 (b)男女の平均勤続勤務年数の差異
 (c)労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
 (d)管理職に占める女性労働者の割合

 また基礎項目に加え、自社の実情に応じて把握することが効果的である選択項目としては、次のものが定められています。

 (a)採用関連として、男女別の採用における競争倍率、労働者に占める女性労働者の割合

 (b)配置・育成・教育訓練関連として、男女別の配置の状況、男女別の将来の人材育成を目的とした教育訓練の受講の状況、管理職や男女の労働者の配置・育成・評価・昇進・性別役割分担意識その他の職場風土等に関する意識

 (c)継続就業・働き方改革関連として、10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合、男女別の育児休業取得率及び平均取得期間、男女別の職業生活と家庭生活との両立を支援するための制度(育児休業を除く)の利用実績、男女別のフレックスタイム制・在宅勤務・テレワーク等の柔軟な働き方に資する制度の利用実績、労働者の各月ごとの平均残業時間等の労働時間の状況、管理職の各月ごとの労働時間等の勤務状況、有給休暇取得率

 (d)評価・登用関連として、各職階の労働者に占める女性労働者の割合および役員に占める女性の割合、男女別の1つ上位の職階へ昇進した労働者の割合、男女の人事評価の結果における差異

 (e)職場風土・性別役割分担意識関連として、セクシュアルハラスメントなどに関する各種相談窓口への相談状況

 (f)再チャレンジ(多様なキャリアコース)関連として、男女別の職種または雇用形態の転換の実績、男女別の再雇用又は中途採用の実績、男女別の職種若しくは雇用形態の転換者・再雇用者又は中途採用者を管理職へ登用した実績、男女別の非正規社員のキャリアアップに向けた研修の受講の状況

 (g)取り組みの結果を図るための指標関連として、男女の賃金の差異

状況把握・課題分析を踏まえた行動計画の策定・届出・公表

 状況把握・課題分析の結果を踏まえて、行動計画を策定することになりますが、行動計画には、(a)計画期間(b)数値目標(c)取り組み内容(d)取り組みの実施時期を盛り込むこととされています。

 (a)「計画期間」は、2016年(平成28年)度から25年(平成37年)度までの10年間を、各事業主の実情に応じておおむね2年から5年間に区切り、定期的に行動計画の進捗しんちょく状況を検証しながら改定を行うこととされています。

 (b)「数値目標の設定」は、事業主の実情に応じて課題であると判断したものに対応して、最も大きな課題と考えられるものから優先的に、また、積極的に複数の課題に対する数値目標を設定することが効果的とされています。数値目標の例としては、「採用者に占める女性割合を〇%以上とする」「男女の勤続年数の差を〇年以下とする」「管理職に占める女性割合を〇%とする」などが考えられます。

 (c)「取り組み内容」を決定する際には、最も大きな課題として数値目標の設定を行ったものから優先的に、その数値目標の達成に向けてどのような取り組みを行うべきかにつき、(d)「取り組みの実施時期」と併せて検討することとなります。

 なお、行動計画の内容は、「男女雇用機会均等法」に違反しない内容とすることが必要です。募集・採用・配置・昇進などにおいて、女性労働者を男性労働者に比べて優先的に取り扱う取り組みについては、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない(女性が4割を下回っている)雇用管理区分であるなど、一定の場合以外は、「男女雇用機会均等法」違反として禁止されています。

 例えば、全労働者のうち女性が5割以上で各雇用管理区分でも女性の割合が4割以上の企業において、「昇進基準を充足する労働者の中から、女性を優先的に昇進させる」という取り組み内容を策定することは「男女雇用機会均等法」違反となります。ただし、男女公正な昇進基準となっていない場合に見直しを行うといった取り組みであれば問題ありません。なお、行動計画策定にあたっては、厚生労働省ホームページに「行動計画策定支援ツール」が用意されており、ダウンロードできるようになっています。

 策定した行動計画は、都道府県労働局に届け出なければならず、また労働者に対して周知・公表しなければなりません。行動計画に定めた数値目標の達成に向けて組織全体で取り組むため、まずは、非正規社員を含めた全ての労働者がその内容を知り得るように、書面の交付や電子メールによる送付等適切な方法で周知するように求められていますし、組織トップの主導の下、管理職や人事労務担当者に対する周知を徹底することも期待されています。

 さらに、求職者・投資家・消費者等が各事業主の女性の活躍推進に向けた姿勢や取り組み等を知ることができるようにするとともに、事業主間で効果的な取り組み等を情報共有し、社会全体の女性の活躍が推進されるよう、自社のホームページや国が運営する「女性の活躍・両立支援総合サイト」への掲載など、適切な方法で公表することも求められています。

 なお、今回、常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主に対しては、行動計画の策定・届出・公表が義務付けられていますが、冒頭で指摘したように、取り組みの実施および目標達成に関しては、努力義務とされています。

女性の活躍に関する状況の情報の公表

 女性の活躍に関する情報を公表することは、就職活動中の学生など求職者の企業選択に資するとともに、女性が活躍しやすい企業にとっては、優秀な人材の確保や競争力の強化につながることが期待できることから、常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主に対しては、女性の活躍に関する状況の情報の公表が義務付けられています。

 情報公表項目としては、次のようなものが挙げられています。

 (1)採用関連として、採用した労働者に占める女性労働者の割合、男女別の採用における競争倍率、労働者に占める女性労働者の割合
 (2)継続就業・働き方改革関連として、男女の平均継続勤務年数の差異、10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合、男女別の育児休業取得率、労働者の1月あたりの平均残業時間、労働者の1月あたりの平均残業時間、有給休暇取得率
 (3)評価・登用関連として、係長級にある者に占める女性労働者の割合、管理職に占める女性労働者の割合、役員に占める女性の割合
 (4)再チャレンジ(多様なキャリアコース)関連として、男女別の職種または雇用形態の転換実績、男女別の再雇用または中途採用の実績。

 必ずしも、これらの全ての項目を公表しなければならないとはされていませんが、公表範囲そのものが事業主の女性の活躍推進に対する姿勢を表すものとして、求職者の企業選択の要素となり得ますので、留意する必要があります。公表の方法としては、行動計画の公表と同様の方法で行うことが求められており、公表の頻度はおおむね年1回以上更新する必要があるとされています。

厚生労働大臣の認定

 行動計画を策定・策定した旨の届け出を行った企業のうち、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況等が優良な企業は、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができることとされています。

 認定は、評価項目を満たす項目数に応じて3段階ありますが、非常に細かい話になりますので、関心のある人は、厚生労働省の関連サイトを確認してもらいたいと思います。

3年後に見直し

 女性活躍推進法は、公布と同時に施行されていますが、事業主行動計画の策定に関する規定は今年4月1日の施行とされており、各事業主は、それまでに行動計画の策定・公表などを行う必要があります。

 従って、まだ行動計画の策定・公表などを行っていない常時雇用する労働者数が300人を超える事業主は、急いで実施する必要があります。なお、女性活躍推進法は、働く場面における女性の活躍推進は喫緊の課題であり、期限を切って迅速かつ重点的に取り組むことが適当であるとの考えから、10年間の時限立法とされていて、2026年3月31日限りで失効することとされています。また、施行から3年経過時点で、施行状況を勘案して、必要に応じて見直すこととされています。

企業の真摯な対応に期待

 女性活躍推進法に規定されている行動計画策定などの義務を果たさない事業主に対して罰則は科されません。そのため、冒頭で指摘したように、女性活躍推進法に対し、その実効性を疑問視する声もあります。しかし、認定制度などによって、企業の女性活躍推進への取り組みや姿勢を「見える化」することにより、優秀な人材の確保や企業イメージの向上につながることが期待できることから、多くの企業が真摯しんしに本問題に取り組んでいます。安倍首相が述べているように「なぜ、女性活躍を推進するのかを問う時代は終わった。いかに実践するかが問われている」わけです。

 罰則がないからといって、法律を軽視し、求められる取り組みを十分に行わないなど、その対応を誤った場合には、企業としての先進性、成長性に疑問を抱かれ、優秀な女性から敬遠されることによって「ブラック企業」としての烙印らくいんすら押されかねないので、企業は、十分に慎重な対応が必要と思われます。

 22日、政府が、国による事業の発注や物品の購入など、いわゆる公共調達を行う際、女性活躍のためのワーク・ライフ・バランスを推進している企業を優遇する方針を決めたとの報道がありました。安倍首相は「公共調達によってこれまで取り組みが遅れていた分野においても企業の意識が変わり、社会全体でのワーク・ライフ・バランスが大きく前進することを期待しています」とコメントしています。

 この報道を見ても、4月1日以降を見据えて、いよいよ政府が本腰を入れて企業に対応を迫ってきていることは明らかであり、企業がどのように真摯に対応するかが試されていると思われます。

 他方、女性活躍推進法は、各企業がどのような項目を開示しているか、その後いかに実行に移しているかなど、企業によって開示された情報を、国民がきちんと監視していくことによって、初めて実効性を持つということを忘れてはならないのであり、一過性の話題とせずに、今後も継続して関心を持ち続けていくことが重要だと思います。

 

2016年03月24日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

 

 


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